ジカ熱とは?蚊から感染するジカウイルス感染症の症状と原因を考察

世界保健機構(WHO)が国際的な緊急事態宣言を発表したことで注目されているジカ熱(ジカウイルス感染症)

世界規模での流行と言えばデング熱が記憶に新しいですが、ジカ熱も同様の感染拡大が懸念されています。

予防と対策の観点から、ジカ熱についてまとめてみたいと思います。

ジカ熱(ジカウイルス感染症)とは?

ジカウイルス(英: Zika virus)はフラビウイルス科に属するRNAウイルスの一種である。1947年、ウガンダにあるジカ森(英語版)のアカゲザルから初めて分離された

発見されたのは1947年ということで、デング熱が見つかったと言われる1779年に比べると比較的若い病気と言えます。

媒介者はネッタイシマカ(Aedes aegypti)という蚊の一種で、デング熱や黄熱を媒介することで有名です。熱帯地域や亜熱帯地域に生息していて、日本では琉球諸島と小笠原諸島にて生息が確認されているようです。

ジカ熱(ジカウイルス感染症)の症状

ジカ熱の主な症状としては、軽度の発熱、発疹、結膜炎、筋肉痛、関節痛、倦怠感、頭痛、皮疹、眼球結膜充血などが挙げられています。ただし、発熱はするもののデング熱に比べると症状は軽く、普通の風邪とも間違えられやすいようです。

症状は軽い。但し他の病気との関連性の懸念が。

アルボウイルス(節足動物媒介ウイルス)と呼ばれる、蚊などの体内で増殖して吸血により広がる感染症(黄熱病や西ナイル熱など)との関連性が疑われているほか、妊婦が感染することで小頭症の子供が産まれることにつながる危険性も危惧されています。

また身体に麻痺を引き起こすギラン・バレー症候群との関連性も疑われているようですが、すべてにおいて解明されているわけではありません。

ジカ熱(ジカウイルス感染症)の感染経路

ジカウイルスを持つネッタイシマカ(Aedes aegypti)に吸血されることで感染します。

2016年1月22日現在の情報では、アフリカ、中央・南アメリカ、アジア太平洋地域で感染が確認されていますが、特に中南米のバルドバス、ボリビア、ブラジル、コロンビア、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、ガイアナ、ハイチ、ホンジュラス、メキシコ、パナマ、パラグアイ、プエルトリコ、スリナム、ベネズエラ、フランス領(グアドループ、サン・マルタン、ギアナ、マルティニーク)などで流行しているそうです。

セックスで人から人へ感染することが判明

米テキサス州ダラス郡の保健当局によると、主に蚊が媒介するといわれるジカ熱について、性的な接触で人から人へ直接感染した例が確認された。
郡当局によると、この患者は今年、ジカ熱を発症している交際相手と性的な接触を持った後で感染が確認された。交際相手は流行国の南米ベネズエラを訪れて帰国したばかりだったが、本人は同国へ渡航していなかった。

今までは蚊による感染しか判明していませんでしたが、セックスでも感染することが判明し世界中に激震が走りました。

CDCのフリーデン所長は2日、テキサス州の発表に先立つCNNとのインタビューで、「輸血や性的接触による感染例も単独では報告されている。ウイルスは患者の血液中に約1週間とどまるが、精液中に残る期間については現在調べているところだ」と話していた。一方で「蚊を介した感染が大半を占める」とも述べていた。

コンドームで予防とのことですが、まだ解明されていない病気ということで気休め程度にしかならいと考えられます。

ジカ熱の予防対策として心がけたい3つのこと

1.流行地域への渡航を避ける

ジカ熱の主な感染経路は流行地域での蚊による吸血です。

それ以外の地域では蚊がウイルスを持っていないと考えられるので、流行が落ち着くまでは渡航を避けることが無難でしょう。

2.渡航先では蚊に刺されないようにする

やむをえず渡航しなければならない場合、長袖・長ズボンの着用を心がけましょう。身体が外気に触れる部分には虫よけスプレーもしましょう。

その他、蚊帳などの使用も有効だと考えられます。

3.流行地域へ渡航した人とのセックスを避ける

この病気の恐ろしい点は、症状が弱く感染した本人が気づきにくいことです。

渡航したばかりの人とのセックスは避け、事前に検査を受けてもらうなどの対策も有効でしょう。

日本での感染例

今のところ日本国内で感染した実例はありませんが、帰国した渡航者が発症した例が3件あります。

フランス領ポリネシアのボラボラ島に渡航した後、Zika熱(Zika fever)と診断された輸入症例2例を報告する。今回の2症例は本邦で初めてZika feverと診断された症例である。

症例1
生来健康な27歳の日本人男性が2013年12月2~7日まで観光のためにフランス領ポリネシアのボラボラ島に滞在した。12月9日より頭痛が出現し、数時間後から38℃台の発熱が出現した。12月10日より関節痛、12日に咽頭痛と皮疹がそれぞれ出現した。12月13日に当院を受診した際は、体温37.2℃で、顔面、体幹、四肢に掻痒感を伴わない紅斑を認めた。その他に特記すべき所見を認めなかった。血液検査では白血球3,310/μL、血小板14.9万/μLと減少を認めた。その他に特記すべき血液検査異常を認めなかった。デング熱の迅速検査ではNS-1抗原、IgMおよびIgG抗体いずれも陰性であった。国立感染症研究所(感染研)で行った12月13日の血清のrealtime RT-PCR検査でZika virus (ZIKV) RNAを同定し、同ウイルスによる感染症と診断した。受診翌日に解熱し、紅斑はその後緩除に消退した。

症例2
生来健康な33歳の日本人女性が2013年12月14~23日までフランス領ポリネシアのボラボラ島に滞在した。滞在中は海岸、森林地帯での滞在歴があった。12月23日頃より37℃台後半の発熱が出現し、12月29日から頭痛、後眼窩痛が出現した。12月31日から顔面、体幹、四肢に皮疹が出現した。1月2日発熱、頭痛は消失したが、皮疹の掻痒感が増強したため1月3日に当院を受診した。体温36.9℃で、身体所見上、眼球結膜充血、両顎下・鼠径リンパ節腫脹および顔面、体幹、四肢に紅斑を認めた。血液検査では白血球3,470/μL、血小板14.7万/μLと減少を認めた以外には特記すべき血液検査異常を認めなかった。デング熱の迅速検査ではNS-1抗原、IgMおよびIgG抗体いずれも陰性であった。感染研で1月3日の血清と尿を検査し、realtime RT- PCR検査で尿中からZIKV RNAを同定し、同ウイルスによる感染症と診断した。その後数日かけて皮疹は消退傾向となった。患者は経過観察目的に現在も外来通院中である。

タイ国のサムイ島に渡航した後、ジカ熱(Zika fever)と診断された輸入症例を報告する。なお、今回の症例は本邦3例目のジカ熱症例であり、東南アジアからの初輸入症例である。
副鼻腔炎に対して治療歴がある以外は特に既往のない41歳日本人男性、2014年7月25~31日までタイ・サムイ島に観光目的で滞在した。8月2日より頭痛を伴う発熱が出現した。カタル症状や下痢の合併は認めなかった。8月3日夜に前胸部から腹部にかけて皮疹が出現していることに気づき、38℃を超える発熱が続くため8月4日に当院外来を受診した。
来院時、体温は37.2℃で、前日までよりは改善傾向にあるものの、頭痛の訴えがあった。身体所見上、両側眼球結膜充血、両側後頚部リンパ節腫脹および顔面・手掌足底を含む四肢・体幹に掻痒感を伴わないびまん性の融合傾向のある紅丘疹を認めた。その他には特記すべき所見を認めなかった。血液検査では白血球数4,940/μL、血小板数18.4万/μLと減少を認めず、CRP 1.12mg/dLと軽度高値を示す以外には異常所見を認めなかった。デングウイルスの迅速診断検査(SD BIOLINE Dengue Duo NS1 Ag + Ab Combo)ではNS-1抗原、IgM抗体・IgG抗体いずれも陰性であった。
臨床症状や検査結果からジカ熱を疑い、国立感染症研究所に血清検査を依頼した。初診時の血清におけるZika virus(ZIKV)遺伝子検査(realtime RT-PCR)は弱陽性であり、判定保留という結果であった。初回受診から3日後の再診時の血清を提出したところ、ZIKV IgM抗体(IgM捕捉ELISA法)が陽性(P/N ratio=11.4, 2.0以上が陽性)と確認されたため、ジカ熱と診断した。なお、デングウイルス特異的IgM抗体(IgM捕捉ELISA法)も再診時の血清で陽性となったが、Indexが低く、交差反応で上昇したものと考えられた。
再診時には発熱・頭痛を認めなかった一方で、眼球結膜充血はあまり改善なく残存しており、皮疹も消退傾向にあったが残存していた。初回受診から11日後の3度目の外来時には自覚症状もなく、皮疹・眼球結膜も消退していた。現在経過観察目的で外来通院中である。

このように、日本国内で感染が広がった例はありませんが、海外渡航者が感染した例が発表されています。

但し、日本から海外へ渡航する人数は多く、この例は氷山の一角の可能性があります。

世界の状況を見ても、油断は禁物といったところでしょう。

ジカ熱についてのまとめ

ジカ熱は症状自体は軽いものですが、他の病気との関連性や感染経路を考えると、今後も感染拡大が懸念される非常に怖い病気と言えます。

日本国内では流行の兆しはありませんが、十分な注意が必要と言えるでしょう。

健康

Posted by mono